「投資=詐欺のイメージがあるから怖い」
「どんな投資詐欺があるか知りたい」
「ポンジ・スキームって何」
という人に向けて執筆しました。
実は不動産投資のポンジ・スキームがあることをご存知でしたか?
かぼちゃの馬車事件は不動産投資詐欺の代表例です。
不動産投資は投資の中でも高額というイメージが先行し、敬遠しがちではないでしょうか。
知識がないため非常に騙されやすいです。
この記事で不動産投資の詐欺を勉強しましょう。
この記事を書いた人
- X:旧Twitter(@gonchan38915)で投資について投稿
- アベノミクス時代に証券会社に勤務
- 5年で金融資産1,100万円到達
- FP資格を保有
事件を理解する3つの要素
①かぼちゃの馬車:スマートデイズが販売していた不動産投資の商品
②スマートデイズ:投資用不動産を販売していた会社で「かぼちゃの馬車事件」を引き起こした会社。2018年に倒産。
③スルガ銀行:スマートデイズと手を組み、投資家に不正融資を実行していた静岡県沼津市にある銀行。現存する銀行。
かぼちゃの馬車について
かぼちゃの馬車とは
かぼちゃの馬車とはスマートデイズが建設・販売していた女性専用シェアハウスです。
スマートデイズが投資家にかぼちゃの馬車という不動産を販売し、サブリース契約を行なっていました。
かぼちゃの馬車という名前は可愛いですが、実態は可愛くないです。
悪魔のようなかぼちゃの馬車です。
後ほど説明します。
サブリース契約とは
不動産オーナー(投資家)と入居者の間に賃貸管理会社(サブリース会社、今回で言うとスマートデイズ)が入ります。
サブリース契約ではサブリース会社が投資家から不動産を借り上げ、不動産の運用(入居者募集、賃料の徴収、不動産管理)を実行します。
サブリース会社の収益は入居者から徴収する賃料から10〜20%の手数料です。
残りの賃料の80〜90%は投資家に支払います。
投資家視点では、サブリース会社に不動産の運用を全て委託できるうえ、安定的に賃料を得ることができます。
ここで分かるように不動産オーナーにとって、サブリース契約はメリットが多いですし、サブリース契約自体は違法ではありません。
では、かぼちゃの馬車の何が問題だったのでしょうか?
何が問題だったのか① 間取りが良くない
かぼちゃの馬車の物件はシェアハウスであって、シェアハウスではありません。
「どういうこと?」とお思いかも知れません。
実際のかぼちゃの馬車の間取りを見てみましょう。
どーん!!
違和感ありますよね?
シェアハウスは入居者が交流するリビングがありますが、かぼちゃの馬車の物件には全くありません。
しかも、部屋によっては扉の前に洗面台、脱衣所、トイレ、キッチンがあります。
廊下の幅も狭いため、廊下を通る時にキッチンや洗面台を使っている人とぶつかりそうになりますよね。
部屋の大きさも1ルーム4.2畳ほどです。
何が問題だったのか② 工事会社からの法外なキックバック
スマートデイズは下請けの工事会社からコンサルティング費用として50%という法外なキックバックを得ていました。
キックバック自体は法律的に問題はありません。
ただ、業界の慣例としては建築費の2〜3%が通常なので、50%は法外としか言いようがありません。
そのため、工事会社は法外なキックバック費用を捻出するために、本来もっと安く建てられるはずの不動産に工事費用を上乗せして施工するしかありませんでした。
かぼちゃの馬車は土地代込みで一棟1億円以上として販売していました。
しかし、実際の不動産の価値は6,000万円しかなかったようです。
結果、投資家は割高な不動産を購入していました。
何が問題だったのか③ 競争に勝てない家賃設定
工事費用が上乗せされた質に見合わない割高な物件なため、必然的に家賃は相場よりも高くなってしまいます。
かぼちゃの馬車は、周辺の1ルームマンションと同じ7万円という家賃設定にも関わらず、部屋の大きさは半分以下という物件もあったようです。
割高な物件なため、魅力がなく競争に勝てず、空室率が非常に高かったようです。
何が問題だったのか④ 赤字を前提としたポンジ・スキーム
かぼちゃの馬車はポンジ・スキームです。
スマートデイズの大きな収益はサブリース賃料の10〜20%の手数料ではなく、50%の法外なキックバックだからです。
下記のようなサイクルを繰り返していました。
①50%のキックバック目的で投資家にかぼちゃの馬車を販売
②キックバックで得た利益を、サブリース賃料として投資家に支払う
③投資家を信用させ、更に新しい投資家を集める
④空室率が高いため、入居者から賃料を得ることができず、新しい不動産を建てる
⑤キックバックで得た利益を、投資家に支払う
このように自転車操業となっており、赤字を前提としたポンジ・スキームでした。
スマートデイズは投資家と35年間のサブリース賃料を保証するという契約を交わしました。
しかし、2017年に投資家にサブリース賃料の減額を請求し、2018年に民事再生法の適用を申請をし経営破綻しました。
非常に悪質ですね。
何が問題だったのか④ スルガ銀行の不正融資
ここで登場するのがスルガ銀行です。
現金一括で不動産を購入できれば夢のような話ですが、大多数の方は銀行でローンを組み、不動産を購入・投資をしますよね。
つまり、不動産と銀行は切っても切り離せない関係性なのです。
かぼちゃの馬車の物件は1億円もの金額を要します。
容易に融資を実行できる金額ではありません。
そうです。スルガ銀行はスマートデイズと手を組み不正融資を実行していました。
スルガ銀行の悪質な不正融資について
スルガ銀行は西には静岡銀行、東には横浜銀行と巨大銀行に挟まれています。
そのため、早くからリテール戦略(個人向けローン)に採用し注力していました。
ユニークな商品郡があり、デンタルローン、ロードバイクローンなどがあります。
個人向けローンで一番収益のある融資は不動産ローンですよね。
不動産向けローンの中でも、投資用物件に積極的に展開していました。
特にかぼちゃの馬車に力を入れていたことが仇となりました。
地方銀行の中で利益額が第3位となり「地方銀行の優等生」とまで言われていたスルガ銀行の何が問題だったのでしょうか?
何が問題だったのか① 文書の改竄
自己資金確認資料の改竄をしていました。
スルガ銀行は不動産向けローンにおいて10%の自己資金を必要としていましたが、資料を改竄して自己資金があるかのように見せかけていました。
具体的にはネットバンクと通帳の残高数字の改竄です。
スルガ銀行が認識していた改竄の件数は861件です。
その他にも、収入の改竄、団体信用生命保険に加入するための健康診断書も改竄していたようです。
また、入居状況の偽装、売買契約書の偽装、物件概要書・事業計画の偽装など枚挙に遑がないです。
事件が発覚してから第三者委員会が設置され、内部の聞き取り調査が実行されましたが「不正が全くない案件など、全体の1%あったかなかったかそのレベル」といった回答も寄せられたようです。
何が問題だったのか② 異常な営業現場
非常にプレッシャーのある営業現場でパワハラが横行していました。
下記、実際にスルガ銀行の現場で発生していたパワハラの一例です。
・「なぜできないんだ、案件を取れるまで帰ってくるな」と言われる。首を掴まれ壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴った。
・数字ができないなら、ビルから飛び降りろと言われた。
・支店長が激高し、ゴミ箱を蹴り上げたり、空のカフェ飲料のカップを投げつけられたことがある。
営業は目標数字が割り振られます。
スルガ銀行はストレッチ目標という公式目標の1.5倍の目標数字を現場は課されていたようです。
余談ですが、2015年にスマートデイズのよくない情報が流れたため、スルガ銀行はスマートデイズとの取引を停止しました。
しかし、迂回用の会社を通して取引を実行したり、販売会社を挟み取引を実行したりと、取引は事実上継続されていました。
ストレッチ目標が高すぎるためスマートデイズの融資を実行せざるを得なかったのでしょう。
適切な目標設定の重要性を感じますね。
何が問題だったのか③ 審査部門の機能不全
どの銀行も融資案件を審査する部署があります。
営業担当が通しても審査部門の承認を得ないと融資の実行ができません。
スルガ銀行はこの審査部門が機能不全でした。
審査部門がチェックして不審点を指摘しても、営業担当、所属長が反論をしていました。
更には専務執行役員が直接審査部の部長に掛け合っていたようです。
結果、審査を押し通されていました。
「時間掛かり過ぎ」「営業妨害するな」というメールが審査部に届くようになり2014年下期以降は99%審査が通るようになりました。
審査部門の独立性が欠如していますね。
スルガ銀行は第三者委員会にこう言われています。
企業風土がここまで劣化し、改善の希望もない状況になると、回復は困難である。自力では変われない
最後に
不動産投資でも詐欺があることを知って頂くためにこの記事を執筆しました。
詐欺に遭わないために最低でも以下の3項目に気を付けましょう✨
①何社も比較をする
不動産会社もピンキリです。
比較は無料なので、何社も比較して信頼できる不動産会社を選びましょう。
②投資家自身が不動産投資について勉強する
しっかりと勉強することによって判断する力が養われ、騙されるリスクが軽減されます。
③物件を直接見てしっかりと確認すること
かぼちゃの馬車はシェアハウスの魅力の1つである共有部分のリビングがなかったり、相場よりも高い家賃設定が問題でした。
高額な投資であるためしっかりと自分の目で確認し、投資の判断をしましょう。