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元証券会社出身が語る証券会社の実態【Part3】

・証券会社で一番辛かったノルマは何?

・自腹を切る社員って本当にいるの?

という人向けに、証券会社で一番営業活動で辛かった外貨建債券の営業について書きました。

ひと言で表すなら、外貨建債券は必ず完売する必要のある商品です。

必ず完売する・・・?と疑問に持たれたと思います。

 

証券会社の営業成績について記載した第2話はこちらから↓

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外貨建債券とは?

 

 

債券=国や企業が発行し、資金を投資家から借り入れるために発行する有価証券(借金)です。

 

外貨建債券=海外の通貨(外貨)で購入する債券です。

 

外貨建債券の特徴としては8点あります。

  1. 外貨で債券を購入する必要性がある
  2. 金利が高い債券が多く、金利は外貨で受け取る
  3. 償還日は外貨で受け取る
  4. 発行元が存在し、国や法人等様々であり
  5. S&Pなど格付け会社が債券を格付けしている
  6. 資金調達のために発行をする
  7. 償還期間(満期)が決まっている
  8. 為替変動リスクがある

 

日頃のニュースで国債という言葉を頻繁に耳にすると思います。

国債の発行元は日本であり、いわば日本の借金です。

日本はGDPの2倍借金を抱えており国債の残高は1,000兆円を超えていることは有名な話ですよね。

財務省のHPに国債について記載があります。

 

日本は20年間以上、ゼロ金利政策を実施しており国債の金利は固定金利型5年満期で利率0.05%です。

※経済を知るうえで、金利は外せない指標のため次回以降記事で執筆します。

 

0.05%っていかがでしょうか?

低すぎですよね。

 

一方で外貨建債券は金利が高いことが特徴です。

 

SBI証券で販売している米国債=アメリカの債券を確認すると2年債でも3.5%の金利でした。

アメリカはコロナショックの際にゼロ金利政策&金融緩和(QE)を実施しました。

QEの副作用で現在は類を見ないインフレ(物価高)に悩まされています。

 

経済指標にビッグマック指数があります。

世界各国で愛されるマクドナルドのビッグマックがいくらで売られているのか?を知ることにより物価の状況を把握することができます。

日本ではビッグマック390円です。

アメリカではなんと5.34ドル!!

日本円に換算すると763円です※2022年9月時点1ドル143円

300円もの差があります。

 

WBSでNY支局のキャスターがNYで1日レンタカーを手配しようとしたら5万円/日だったようです。

アメリカはインフレ(物価高)が止まらない状況です。

 

物価上昇を抑えるためには、ドルの価値を上げる必要性があります。

アメリカは、ゼロ金利政策を解除して、金利を上げてドルの価値を高める施策を行なっています。

そのため、米国債は3.5%もの金利があるのです。

 

皆さんは日本の国債米国債のどちらでお金を運用したいですか?

多くの方は後者を選択すると思います。

 

米国債を購入するためには円を売って、ドルを購入します。

これが今の円安ドル高の理由です(円を売る=円安、ドルを購入=ドル高)

アメリカと日本の大きな金利差が1ドル143円の要因となっています※2022年9月時点

 

新興国の外貨建債券の落とし穴

 

 

新興国は金利が高い傾向にあります。

何故ならば、新興国は通貨が弱いために先進国へマネーが流れる傾向にあるためです。

 

金利を高く設定しないと自国通貨の債券を購入してもらえないのです。

 

SBI証券で調べた新興国の既発債(既に発行した債券)の金利を記載します。

 

  • トルコリラ:35%
  • 南アフリカランド:7%
  • メキシコペソ:8.5%
  • ブラジルレアル:10.5%(円貨決済型)

※以前はロシアのルーブル債がありましたが、ウクライナ戦争で販売禁止となっています。

 

いかがでしょうか?

かなりの高金利ですよね?

 

 

この高金利に飛びつく人は危険です!

何故ならば、新興国は為替変動リスクが高いためです。

 

下記チャートは金利35%のトルコリラ・円の為替です。

 

 

2008年は1リラ=約100円でした。

現在は1リラ=約7.8円にも価値が落ちています。

なんと1/10です。

金利を35%に設定しないと、誰もトルコリラを購入しないのです

 

金利7%の南アフリカランド・円の為替です。

 

2006年は1リラ=約20円でした。

現在は1リラ=約8.2円にも価値が落ちています。

約半分です。

 

新興国の通貨はとても危険なことがお分かり頂けましたでしょうか?

新興国の債券が金利が高いからといって購入するのは非常にリスクです。

 

外貨建債券を完売する必要性について

 

 

あなたは経営者と仮定します。

経営者は会社の売上を拡大していくことが一番の仕事ですよね。

 

経営者は10年後、5年後の経営計画をベースに売上目標=予算を設定します。

そして、売上目標を下記のように降ろして、振り分けます。

 

事業部

統括部

営業社員

 

営業社員は売上目標を達成して初めて良い評価がされます。

勿論、未達だった場合は評価が下がります

 

ここで疑問が生じます。

全営業社員売上目標を達成するために、死ぬ物狂いで営業活動をするのでしょうか?

 

多様性と言われる世の中です。

必ずしも全営業社員が目標達成のために頑張るとは限りません。

 

社会人経験が長く、営業組織に属する人間であれば理解できるはずです。

 

経営者のあなたは悩むはずです。

ここで、必ず売上目標を達成するための仕組みがあると聞いたらいかがでしょうか?

経営者であれば即食い付くと思います。

 

仕組みとは販売期日が決まっている商品営業社員に割り当てることです。

 

そうです。

外貨建債券は販売の期日があります。

そして、各支店の営業社員に割り当てられます。

 

復習になりますが、債券=国や企業が発行し、資金を投資家から借り入れるために発行する有価証券(借金)です。

 

資金調達をするために、債券は発行金額を決定したうえで発行されます。

 

社債(法人が発行する債券)を例に記載します。

A社が資金調達のために300億の社債を発行します。

資金は投資家から調達します。

ここで質問です。

この300億は誰が販売して投資家から調達するのでしょうか?

 

 

答えは、証券会社の営業社員です。

 

 

また質問です。

期日に間に合わず290億しか営業社員が販売できませんでした。

結果、300億円の予定でしたが、290億円の資金調達になりました。

この事象は許されるのでしょうか?

 

許されません!!

 

つまり、債券は期日までに必ず完売する必要があるのです。

 

僕が在籍していた証券会社は2週間毎に外貨建債券が割り当てられていました。

外貨建債券は為替手数料が高く、完売する必要性があるので、経営視点で為替手数料による売上が把握できるメリットがあります。

これが証券会社が外貨建債券を販売する大きな理由です。

 

2週間毎に営業目標として設定される外貨建債券のプレッシャーは生きた心地がしませんでした。

 

忘れもしない出来事

 

 

想像してみてください。

次回も同じ通貨の外貨建債券を販売することを。

 

しかも、金利が低かったらいかがでしょうか?

 

地獄です。

 

この地獄の出来事が証券会社時代に実際にありました。

 

ここでは通貨は控えさせて頂きます。

前回と同一通貨前回よりも金利が低い外貨建債券を販売することになりました。

僕は当時若手だったため、新規のお客様に販売することで何とか目標を達成することができました。

ですが、上司は新規開拓はしないため、既存のお客様に販売するしかありません。

 

既存の全てのお客様には前回の高い金利の外貨建債券を案内済です。

前回よりも金利が低い商品を購入する理由が見当たりません。

 

〆切前日となっても、450万円分の外貨建債券が(当時のレート)残っています。

時計が21時を回っていましたが、若手〜中堅社員も協力することになりました。

お客様に片っ端から電話し、営業活動をします。

ですが、リタイアしているお客様が多いため、夜遅いと電話すら繋がりません。

 

未消化の450万円分の外貨建債券を残したまま、管理職は残り、若手〜中堅社員は帰宅することになりました。

 

次の日、出社すると450万円分の外貨建債券が跡形もなく無くなっていました。

 

課長が自らのポケットマネーで外貨建債券450万円分を購入したのです。

 

僕はこの出来事がきっかけで将来の自分を想像し、怖くなり退職を決意しました。

 

現在その通貨は1/2になっています。※2022年9月時点

 

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